哀毀骨立

「哀毀骨立(あいきこつりつ)」

 悲しみのあまり痩せ細り、骨ばかりになること。悲しみの極み。「哀毀」は悲しみのあまり体を壊す、また、痩せ細る意。「骨立」はやせて骨ばかりになる意。

 

 

痩せない。

 

 

痩せないんだよ。

 

 

 

 人生において、標準以下であった期間はわずかに3年間。あとは毎年最高記録を更新している。

 幼少期、幼稚園児の頃は、それはそれはもうキュートandラブリーで、「ハーフ?!」とか「女の子かと思っちゃった!」なんて間違われたりもしたし、親戚のおじさんからは「リチャードギアにそっくりだな!」とお褒めの言葉をいただいた。

 たしかに幼児は髪の色素が薄く、細く、毛量も多くて、栗色である子も多い。僕も例に漏れずかわいい生き物だった。

 小学校に入ってから異変が起こる。

 あんなに利発そうな天使は家に帰ればゲーム三昧で食ってはゲーム、マンガ読んじゃ飯食って。僕がダムだったら相当に優秀なくらい溜め込んだ。

 

 それまでの貯金を吐き出してなお痩せ続けたのは中学生の頃。

 男子バレー部に所属した僕は連日の運動と毎週のようにある練習試合(一時期は本当に毎週練習試合を行った)によって、みるみる痩せていき、女子バレー部にもファンクラブができていたらしい。スペックだけ見れば確かにモテそうな感じはある。バレー部副部長、ピアノが弾ける、身長もあるしひなたぼっこが好きだった。

 人生で最多人数にモテたのがこの時期である。痩せればモテるのである。

 

 問題は痩せないことである。

 中学を卒業してからは暴落・高騰の一途である。(暴落と高騰の意味が一致する稀有な文だ)

 小学校でため込んだものは中学の3年間で払い戻しが利いたが、高校と大学で抱えた負債は随分としぶとく、今もなおピンピンとしている。

 

 ストップ高だと思われた体重は、実は何度かの限界突破を経ており、僕を絶望の淵に何度も叩き落とすのです。高いんだか低いんだかよくわからない文章だ。

 

 一度目の限界突破は病気したのがきっかけだ。

 新卒一年目でパワハラを受け、抑うつ症状が出てしまった。そのときにパキシルという薬を飲んだ。確か、その薬の副作用に「脂肪が溶けにくくなる」とあった。そのせいか、その頃既に肥満体型であったのに、さらに5キロほど増えた。

 もう限界だろうと思っていたが二度目がきた。コロナでの自粛期間で、いわゆるコロナ太りというやつだ。これでさらに5キロ…。

 中学生のころに部活を引退してから15キロほど重くなった高校大学の記録を悠々と抜き去った社会人生活…。

 

 悲しみばかりなのに痩せていかないこの身体はなんなのだろうか。哀毀骨立とはなんなのか…。